「この子は水の気が多い」。
ハリウッドで映画化された芸者の一代記『SAYURI』に、祇園の置屋に売られてきた少女が女将からこう告げられる場面がありました。ものの気質を金、火、土、木、水と分類する五行説を使って、女将は少女の性格を「水」と判断したのです。果たしてその見立て通り、少女は芸者・さゆりとして、過酷な運命に逆らうことなく、水のようにしなやかに生きました。
京都の女と水。平安時代が舞台の謡曲『鉄輪』の女は夫の不実を恨んで貴船の水の神に訴え、歴代の皇后は皇子の健やかな成長を祈って神水を産湯に用いました。八坂神社に静かに湧く「祇園神水」では、舞妓や芸妓が美を願ってそっと手を合わせる姿があります。女たちは切なる思いを水に託し、都の水はそれを受け止め、浄化してきました。
京都には、琵琶湖に匹敵するだけの水量の地下水があるといわれます。この、硬度が低い「軟かな水」は、女性たちの肌をやさしく潤してきました。女の願いを水に託して、京都の水めぐりのドライブに出かけてみましょう。 |
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